第30回「徳之島を食べてきた」
2023年 11月 05日
10月29日から11月1日まで亜熱帯の島「徳之島」を旅してきた。鹿児島県鹿児島市の南南西約450kmの洋上にあり、奄美群島の1つとして、奄美大島と沖永良部島の間に位置する離島だ。

カミさんの父方の祖父母がこの島の出身だ。今回はルーツを訪ねるのが主な目的で、実際にカミさんの父親の“いとこ”であるマンゴー農家を訪問した。ここの夫妻には滞在中、とてもお世話になった。宿泊は北部にある「ホテルサンセットリゾート」を利用した。
当コラムであるから紹介も食べ物中心である。徳之島ならではの料理を紹介する。では始めよう。
まずはホテルのレストランで食べた3品だ。
●鶏飯(けいはん)
奄美の郷土料理の代表格的存在。鶏肉や錦糸たまご、椎茸、漬け物などを白飯に載せて、地鶏のスープをかけて食べる。さっぱりした中にも鶏の濃厚な旨みが光る。爽やかな香りは青いみかんの皮だ。

●ワンフニ
同レストランで「豚骨定食」を頼んだら、後で知ったのが「ワンフニ」だった。ワンフニは豚肉を黒糖焼酎や黒糖、醤油で“ほろほろ”になるまで煮込んだ郷土料理。豚肉の旨味をギュッと凝縮した柔らかな肉が美味い。

●夜光貝スパゲッティ
スパゲッティは普通のスパゲッティで郷土料理ではない。メインの具材が珍しいので紹介する。「夜光貝(やこうがい)」は貝殻を研磨すると美しい真珠層が現れ、古くからアクセサリーや螺鈿細工に使われる貝。徳之島に生息する夜光貝は大型で高級品に用いられている。また、徳之島では身が食用として、刺し身や味噌漬け、バター炒めなどとして食べられている。実際に食すると硬くシコシコした食感が新鮮だ。

次はテイクアウトしたもので眺望抜群の浜で食べた。
●たまごおにぎり
徳之島のソウルフード。「ファミリーマート」や弁当チェーン「かまどや」の自店製造おにぎりを上がファミリーマート、下がかまどやのものだが、その他のものは説明を省略する。「たまごおにぎり」の名前そのままで、玉子焼きでおにぎりを包んだだけの食べ物だ。定番は塩むすびだが、その他、豚味噌やポークランチョンミートを具として入れたものも一般的だ。


ここまでは徳之島観光連盟のWebサイト「徳之島観光ナビ」を参考にした。
次は前述のマンゴー農家でご馳走になった徳之島の家庭料理だ。

●塩豚
右上の写真。塩味だけのシンプルな豚肉料理だが、シンプルだからこそ豚肉の旨味をダイレクトに感じられる料理だ。徳之島町のWebサイトにあった作り方を紹介する。三枚肉やバラ肉にたっぷり塩を揉みこみ一晩置く。これを茹でこぼしてきれいにした後、水をたっぷり入れ生姜や長ねぎを加えて40~50分間煮る。これを適当な大きさにカットする。
●アカマツのアラの味噌汁
右下の写真。鹿児島県のWebサイトを参考にする。200m以上の深海に生息する体長が最大1mを超える「フエダイ」中最大の魚。漁獲されるものは体長40~80cm、重さ1.5~7kg程度のものが多い。1年中漁獲され、奄美群島を代表する高級魚だ。徳之島ではアカマツのほか、アカマーツ、アカマチ、チビネなどの呼び名もある。
主な食べ方が刺し身だが、鮮やかな赤い皮目を生かした煮付けや焼き魚なども美味しい。今回はそのアラの味噌汁をいただいた。
――と様々な徳之島の食を楽しんだが、その最中に考えたのが、このような優れた料理の数々が奄美ないしは徳之島のローカルフードになぜ留まっているかということだった。
食用にできるような大きさの夜光貝や、奄美ならではの高級魚アカマツは別の地域では新鮮なものの入手がほぼ困難だから話は別だが、その他の鶏飯、ワンフニ、塩豚は特別むずかしい料理法ということもなく、良い材料が入手できれば、時間を掛けていねいな下拵えを行えば、家庭料理のバリエーションを増やすことができると思う。
特にたまごおにぎりは、なぜ全国区にならないのか不思議でならない。薄焼きたまごを巻くだけのシンプルさで、こんなにインパクトのある外見と、優しい味わいが楽しめる。スーパーやコンビニの商品開発担当者はぜひ一考を。もちろん、家庭でお弁当を作る場合にバリエーション化にも役立てると思う。
付録としてお土産全ての写真を掲載する。

FROM THE WRITER
さて、4日間、徳之島のあちこちを車で回った。主要道路はほぼ全て島の外周を走る。当然のことながら、島は鮮やかなブルーの東シナ海に囲まれている。
島はいたるところサトウキビ畑である。そこを走り抜けると、かなりの頻度で獣の強烈なにおいが開いた車の窓から入ってくる。徳之島はサトウキビ栽培と牛の肥育が主力産業だ。特に徳之島の場合は、肉牛の成牛ではなく、島外でさらに育てるために、子牛を島外に出荷する、それを生業とする畜産農家も多い。
サトウキビを原料とした砂糖製造は徳之島にとってなくてはならない産業だが、収益性の点で課題が多いというのがこの島の昔からの悩みだった。もっと収益が見込める作物はないかという観点から着目されたのが「マンゴー」だった。
2022年7月22日付けの奄美新聞では、徳之島の天城町におけるマンゴー栽培の始まりについて次のように記している。
〈同町でのマンゴー栽培は1985年、農家有志たちの栽培技術模索で始まった。町当局は高収益型新規品目に位置付け、耐風ビニールハウスなど生産基盤施設導入事業でテコ入れ、以来、同品目の県内先進地域として“けん引役”を果たした〉

この天城町の農家有志の1人が、アサヒのカミさんの親戚である「島マンゴー園」の島利重さんだ。道路を隔てて海が臨める地にこの農園がある。アサヒ夫妻はちょっと農作業“もどき”を体験させてもらった。今は6~8月の繁忙期(収穫)を過ぎて来年のために準備を行う時期なので、真似事に過ぎなかった。「来年の繁忙期に仲間を募って収穫の手伝いに来てください」という依頼なのか命令なのか分からないことを言われた。

島さんが言うには、前述の1985年に始まった天城町のマンゴー栽培の模索は、島さんの農家仲間が旅先の台湾で見た「アーウィン(別名:アップルマンゴー)」栽培に着目し、苗を輸入したことがきっかけだったという。
前述の奄美新聞によれば、栽培主体のアーウィンの2022年時点の栽培面積は約5・5ヘクタール(農家は約50戸)だという。その中で「天城町熱帯果樹生産組合」に加入している組合員は32人だという。
天城町で収穫するマンゴーは「ふるさと納税」である「天城町ゆたかなふるさき寄付金」の返礼品としても最も人気のある商品だと同記事は記す。
島さんの「島マンゴー園」は市場を通す販売方法ではなく、消費者と直接つながる通信販売を行っているのが特徴だ。
